「風邪の効用」について

最近、素晴らしいニュース記事を目にしましたので、その事と関連して風邪の対処法について書いておきます。

整体では、60年前から風邪の「効用」を訴えています。整体法の創始者、野口晴哉はそれらについて1960年代に講義を行い、整体協会が内容をまとめ、「風邪の効用」と題して1986年に出版しました。
私が師事する井本邦昭先生も、1995年に「風邪をひけ!熱を出せ!」を出版されております。

風邪の「効用」と言いますのは、整体では、風邪は健康でバランスの取れた体に還るための、自発的な一連の反応であると捉えているのです。具体的に申しますと、風邪やインフルエンザによる発熱の結果、末期ガンが消滅した、難病が治ったなどの事例が(少数ではありますが)臨床で観察されているのです。

もちろん、このような事を言うとバカバカしい、ニセ科学の話のように聞こえるでしょう。しかし最近出た以下の記事“Bouts of fever may make us more resilient to cancer”には、

「何十年にもわたり、数々の研究が発熱の既往歴と癌リスク低下の関連性を示唆してきた」
そして、科学者たちは「感染による発熱は、Vg9Vd2 T細胞を血中の白血球の60%まで顕著に増加させ」「ガンマデルタT細胞を増やし、腫瘍に対する、生涯にわたる免疫抵抗力を高めるカギとなる」
ことを発見した、と書かれています。

また、ご存知かと思いますが、いわゆる「難病」の多くは免疫機能の異常に起因すると見られています。
感染による発熱は、免疫機能の重要な働き。つまり、あなたが解熱剤を飲んだ時、免疫機能はその働きを邪魔されます。伝統医学の視点から、整体ではこれが免疫機能の異常を引き起こす主要な原因ではないかと見ています。

ですから、もしあなたが免疫機能を正常に戻したい、または強化したいのであれば、今度風邪をひいた時には、邪魔する事なくしっかりと経過させる事をお勧めいたします。

その方法は以下のようになります。

1. 固形物を摂らない。風邪薬を飲まない。

風邪薬を飲まない理由は前述した通りですが、風邪薬は風邪の「諸症状を抑える」ものです。これらの諸症状は正常な免疫反応や、排泄反応の結果ですので、それを抑えるという事は正常な免疫反応を抑制し、毒素の排泄を抑えるという事です。排泄されずに溜まった毒素は、体内に溜まって後に別の形で病気の原因となります。

固形物を摂らない、の理由は、「食べる」というのは吸収の働きですから、毒素の「排泄」の逆の働きで、やはり排泄の邪魔をする事になるからです。

また、吸収の前に「消化」がありますが、たくさん食べると動けなくなるように、消化にエネルギーを使う事で新陳代謝に使うエネルギーが奪われます。ですから、風邪による発熱で活発になるはずの新陳代謝にブレーキをかける事になるのです。その結果、風邪が長引いたり、咳がいつまでも残ったりしがちになります。

固形物を避け、カロリーを落とすことで、つまり胃をカラにする事で、風邪の経過は劇的に早くなり、症状も軽くすみます。
水分は、スポーツドリンクやスープ、お茶など、体の要求に従って取ります。
(世界には、風邪の時はウォッカ等アルコールを摂って発汗を誘導する地域も多いのですが、肝臓が硬直するため、整体では飲酒は避けるように言っています。)

2. 出来るだけいつも通り動く。

これも常識とは逆ですが、発熱している状態というのは「実」の状態ですので、ポイント1を守っていれば意外と普通に動けるものです。そして、動くことで更に新陳代謝が活発になります。
アスリートが高熱を出したまま試合に出て、意外な好成績を残した話をお聞きになったことがあるのではないでしょうか。

3. 蒸しタオル法で後頭部(発熱中枢)を刺激する。

発熱が正常であれば、必要はありません。ただ、熱があまり上がらず寒気がしてどうも経過が悪い、または高熱がなかなか下がらない、熱が上がったり下がったりする、などの時には後頭部(ぼんのくぼ)に熱い蒸しタオルを当てると、脳の発熱中枢が刺激され、正常な発熱が誘導されます。
5分ほどでタオルがぬるくなりますので、また熱くして合計3〜5回ほど繰り返します。その温度の波が、最も効果的な刺激となります。

4. 熱が下がった後も、約16時間は安静にして固形物は避ける。

熱が出ている時とは逆に、熱が下がった時、体は疲れ切った「虚」の状態になっています。この時は注意して体温を測ると平熱よりわずかに下がっており、いわゆる「低温期」になっています。
この期間に栄養を「取り戻す」かのように食べてしまうと、肝臓が腫れてなかなか戻りません。また、この期間に強い刺激を入れたり、体を冷やすと風邪がぶりかえして、今度は長引く事になります。

これらのポイントを守れば、風邪の経過は劇的に早くなるでしょう。整体では、2日も風邪を引いていると「長すぎる」と言われます。
子供のように、パーッと高い熱を出して、それでも意外と元気に遊んでいたり、食べるのを嫌がって、急に寝て、翌日にはケロッとしている、というような風邪の引き方が最高なのです。

うまく風邪を経過させられると、発熱と排泄によって新陳代謝が活発になりますので、顔色がよくなったり、肌が綺麗になったり、体が引き締まったり、長年の不調や、関節の痛みなどが消えている事に気がつくかも知れません。

整体の言う事は、世間の常識とは真逆な場合も多いのですが、長い年月をかけて整体指導者に確かめられてきた方法です。それが先述のように、今になって最新の医学によっても裏付けられてきております。