整体とマインドフルネス
近年、オランダでもマインドフルネスが流行っていると聞きます。マインドフルネスとは元々禅やヨガから来た概念のようですが、この高度情報化社会においては、過去を悔やみ、未来を憂い、今を忘れがちな現代人にとって必要性を増している概念なのでしょう。
整体の創始者、野口晴哉氏は「臨済録」という禅宗の一派、臨済宗のバイブルとも言える本をいつも手元に置いていたそうですが、その中心的な教えは
「赤肉団上に一無位の真人あり 常に汝等諸人の面門より出入す 未だ証拠せざる者は 看よ看よ」
(あなたの肉体の中には唯一無二、完全無欠の存在がある。まだそれに気がつかないか。自分の中を見ろ!)
だと思います。
現在、整体はいかなる宗教とも無関係ですが、その源流となる思想は禅の影響を大きく受けているように私は思います。
井本邦昭先生は、「心と体は一つ」「わざわざ滝に打たれないと修行ができないようでは駄目」と昔から仰っていましたが、体を整えることで心が整うのであれば、確かに「ここではないどこか」へ行く必要はどこにもありません。
整体は体の「中心」に力を集めることで、その人の中に本来持っている生命力をフルに活用する技術です。力を集めるとは、意識を集めることでもあります。それはとてもシンプルなことですが、複雑な社会に生きる現代人が忘れがちなことでもあります。
整体に伝わる、以下のような簡単な呼吸法で、あなたの「中心」に力を集めてみてはいかがでしょうか。
脊椎行気法
- 背筋を伸ばして座る(正座ができれば正座をする)
- 頭のてっぺんに穴が空いているイメージで、そこから背骨に沿って息をゆっくり深く吸い込んでいく
- 背骨の下の方(腰椎)まで深く吸い込んだら、逆のルートで頭のてっぺんから息を吐いていく
- 1〜3をしばらく繰り返し、最後はゆっくり息を吐きながら、右目、左目の順に目を開けて終了する(右目から開けるのには理由があります)。
このように書くと簡単ですが、実際にやってみると、背骨のどこかで息がつっかえて腰まで吸い込めない方が多いと思います。その椎骨はあなたの不調の原因ですので、その骨を小さく動かすようにしながら、呼吸を往復させていると段々とそのつかえが取れ、深く吸い込めるようになってきます。
こうして一つ一つ背骨のつかえを取ることで「完全な健康体」に近づいていく呼吸法で、理屈は単純だが実践は難しい、究極の呼吸法ともいえます。