整体と指圧、マッサージとの違い
患者さんからよく聞かれる質問に、「整体は指圧とは(マッサージとは、etc.)どう違うのですか?」というものがあります。
私は井本整体しか深くは学んでおりませんので、比較ができずとっさに答えられない事が多いのですが、これまでの経験で「こういう所が違うかな」と思う主要なところを書き記しておきます。
命に対する礼
井本整体に入門すると、まず最初に必ず教えられるのは「命に対する礼を忘れない事」です。技術に対して誠実に向き合うことは、もちろん学習者にとって大事なことですが、その中でふと、世界にただ一つの「相手の命」を忘れてしまう事があります。
また、臨床に出ると日々の忙しさの中で、思わず作業をこなすように患者さんのお体に触れてしまいそうになりますが、これはとても失礼な事であり、ある講師には「体に触れることに緊張感を持たなくなったら、整体を辞めた方がいい」と言われたこともあります。
硬結
ツボ(経穴)と言うのは皆さん聞いた事があると思います。体表のごくわずかな凹みですが、元々は「大事な宝がしまってある壺(容れ物)」という意味でツボと呼ばれるようになったと聞いた事があります。井本整体では、この微細なくぼみの中に、「硬結」という宝がある、と教えられます。
硬結は岩塩の粒のような小さな塊で、尖った角を持っています。この角を指で直角に捉えて押さえる事ができると、刺激が体の中に浸透し、その人の体の悪いところに向かって響いて行きます。
それもただ押さえれば良い訳ではなく、ちょうど良い圧度で押さえ、そこで静止する事で初めて効果を発揮します。この硬結も、かつては鍼の名人が長年の経験の中でようやく見つけ出し、ごく限られた子弟にしか伝えなかった秘伝でした。
とは言えこれは整体操法の初歩の初歩で、この後にいくつかのプロセスを経て最大の効果を発揮しますが、これは省略させて頂きます。
中心
井本整体では、硬結を直角に捉えるのと同じように、相手の「中心に力を集める」事を行います。
図は極端ですが、同じ方でも疲れてくると肩甲骨の位置や肋骨が外に開いて、左図から右図のようになって来ます。人は、元気な時は中心である背骨に力が集まっていますが、この時は背骨が体重を支えているので体の重みを感じる事なく、素早く動いたり考えたりする事ができます。
また、中心に力が集まると余計な緊張が取れますので体が弛み、血液やリンパ、神経系統の流れも良くなります。流れが良くなりますので、老廃物や余分な脂肪などの排泄も促されます。
井本整体では、操法(施術)においても、体操においても、必ずこの「中心に集める」事を意識します。これは井本邦昭先生が長年の臨床経験の中で見つけ出した力学的な原則で、この原則に基づいて井本整体の技術は編纂され、「人体力学」と総称されています。