整体法は新型コロナに何ができるか
現在、自分が新型コロナにかかっているか分からず不安だったり、まだ特効薬が無いため自宅で闘病せざるを得ない方も少なくないようです。
「整体法」は日本の伝統的な代替療法ですが、医療ではないので何か病気を治せるという事はありません。しかし、現在のように良く効く薬や医療設備もない時代から、「個人の自然治癒力を最大限引き出す」ことで病気に対処しようと長い間積み上げられてきた、臨床経験に基づいた独自の技術と理論を持っています。
この世界的な新型コロナウイルスの流行に際し、むしろ伝統的な整体の知恵が役に立つのではと思い、それらの技術の中からご家庭でできる簡単なものをご紹介する事にいたしました。
- 医療機関受診の目安(医学的基準と整体的基準)
- なぜ肺が炎症を起こすのか
- 肺炎の時、整体ではどう対処するか
- 鎖骨への蒸しタオル
- 鎖骨よせ
- 肺炎の予後
- 終わりに(次々と襲いかかる新型ウイルス)
1、医療機関受診の目安
言うまでもありませんが、各国の医療機関が感染予防対策と医療機関受診の目安を発表していると思います。そちらを順守なさって下さい。
その前提で、整体ではどのように肺炎(や結核)を判断するか、その方法を書いておきます。
一息四脈の法
高熱が出ていても、脈拍数に対して呼吸数が対応していれば酸素の供給ができているので自己治癒力で回復に向かうことが可能ですが、呼吸が弱ってくると酸素が欠乏し、危険な状態に近づいて行きます。
健康な状態では、人は1回の呼吸あたり4回脈を打つと言われています。これが呼吸1回あたり脈拍が、
2回前後になると危険な状態(SARS, 肺炎、結核など)と見なされます。
3回だと要注意。
4回か、それ以上になる分にはあまり問題視されません。
測り方としては以下のようになります。
- 一分間、呼吸数を測る
- 一分間、脈拍を測る
- 呼吸数で心拍数を割る
2、なぜ肺が炎症を起こすのか
「炎症」とは異常に対する生体防御反応です。今回であればSARS-CoV-2という新型ウイルスに対して、肺が炎症を起こして白血球をたくさん送り込んだり、死んだ細胞を取り除いたり、新しい細胞を増殖させたりしています。
ですから炎症を無理に止める事は望ましくありませんが、例えば免疫が過剰反応を起こして健康な肺細胞まで破壊してしまう(サイトカイン・ストーム)ような場合は、急激な呼吸困難を起こすため炎症を抑える医療措置が取られるようです。
整体には、医療ではないので薬が使えないため、患者本人の「呼吸する力」を引き出す事で対処する方法が伝わっております。
3、肺炎の時、整体ではどう対処するか
体には呼吸を助ける筋肉がたくさんありますが、その中でも重要な役割を果たしている筋肉が大胸筋です。そして、大胸筋をカーテンレールのように吊り下げているのが鎖骨です。大胸筋は鎖骨を支えにしながら呼吸を助けていますが、肺の負担が大きくなってくると、だんだん疲労して弾力を失ない、呼吸を助けられなくなってきます。この時、大胸筋は痩せて弱々しくなっていますし、それを支える鎖骨は周辺組織(靭帯、腱)の硬直によって、触れてみると骨自体が硬く感じられます。
特に、胸鎖関節という喉に近い所にある関節が硬直して動かなくなってくると喉が締め付けられて、呼吸ができなくなり危険です。そのため、鎖骨、特に胸鎖関節を弛めて大胸筋の伸縮を支える力を取り戻すことが対処法となります。
4、鎖骨への蒸しタオル
鎖骨は非常にデリケートな箇所ですので、プロでも操作が難しいところです。ですので、ここでは一番安全で誰にでもできる「鎖骨周辺に蒸しタオルを当てる」方法をご紹介します。詳しい場所は、後述する「鎖骨よせ」と同じあたりです。
蒸しタオル法の基本
- 85cm×35cm程度の、やや厚手のタオルを1枚用意します。
- タオルを手のひらより少し大きい程度の大きさにたたみます。
- 水に浸して、水が滴らない程度に水分を残して絞ります。
- 加熱します。熱くなりすぎた時は、火傷しない温度まで冷ましてください。
・電子レンジを使う方法… 60〜90秒程度加熱します。
・熱湯を使う方法… 熱湯にひたしてから絞ります。火傷しないようにゴム手袋をはめて絞りましょう(軍手の上からゴム手袋をはめるとより安全でしょう)。 - 快適な温度よりは高く、火傷するよりは低い温度で患部に当てます。
4分ほど経って冷めてきたら、同じタオルを温め直します。
再び患部に当てます。3〜5回繰り返します。
(蒸しタオル法の後に好転反応として一時的に咳が酷くなる可能性がありますが、なるべく咳は出すようにして下さい。
また、ホッカイロなどで代用せず必ず蒸しタオルで、この手順で行って下さい。
その理由はこちらの記事で詳述しております)
この熱の上下が筋肉の伸び縮みを誘導して、ひいては肺の伸び縮みを誘導します。通常は呼吸が楽になりますが、かえって苦しく感じる時は中止して下さい。
5、鎖骨よせ
もう少し難しい方法としては、介助者が両手で鎖骨を寄せる事で胸鎖関節周辺を弛める技術があります。
上図のL(青色)が左手、R(水色)が右手ですが、まず右手を相手の胸にあて、左手でその上からしっかり締めます。呼吸困難の人の鎖骨ほど硬く感じますが、締めてあげると呼吸が楽になります(これは不思議な感じがするでしょうが、テニスの後などに手首が痛い時に、なんとなくグッと締めた事はありませんか?関節には締めるとゆるむ、という原理があるのです)
決まった時間はありませんが、そのまま30秒ほど固定して、患者の呼吸が少し穏やかになってきたら、ゆっくりと手を離します。
施術者がグラグラしないこと、相手の左右のバランスを崩さないことに注意して下さい。
6、肺炎の予後
整体では「肺炎の後は1年間は腕を使ってはいけない(重い物を持ってはいけない)」と言います。
上腕二頭筋は肩関節につながっていますが、肩関節は鎖骨とつながって、共に胸部を支える重要な役割を担っています。その為、まだ肺が充分回復していない弱い時期に腕を使うと肋骨が下がり、中に入っている肺を圧迫して回復を妨げ、すなわち体力の回復を妨げます。
また、手のひらも肺と関係が深いため、肺炎の後しばらくして手のひらの皮がボロボロむけることがありますが、これは「肺の脱皮」と言って回復の一つの目安となります。
7、終わりに
この度、武漢を中心に新型コロナウイルスが急速に広がってしまいましたが、過去にはSARS、MARS、古くはスペイン風邪、と伝染病は常に人類を襲っていますし、これからも続くでしょう。公衆衛生によって伝播を防ぐこと、遅らせること、先端医療によって治療することがもちろん重要ですが、同時に「個々人の生命力を高めること」も重要です。
この記事で述べた対処法は通常の肺炎、喘息など呼吸器系の症状に適用されて来たものですので、新型コロナにも応用可能かもしれません。伝統療法としての整体法の知恵が、少しでも役に立つよう願っております。
この記事に関しての質問や、体験談などありましたらぜひお寄せ下さい。